ES(エントリーシート)作成で生成AIを使うなら、最初から全文を書かせるより、自分で事実を整理した後に、設問の分解、抜けの確認、文章の短縮など限定した作業を頼む方が、誤りや自分らしさの消失を防ぎやすくなります。
AIの出力は提出できる事実の保証ではありません。企業・学校の利用ルール、サービスのデータ取扱いを確認し、個人情報や企業の非公開情報を安易に入力せず、最後は自分が一文ずつ説明できる内容へ直してください。

AIへ任せやすい作業と、本人が行う作業
| AIを補助に使いやすい作業 | 本人が責任を持つ作業 |
|---|---|
| 設問の問いを箇条書きへ分ける | 経験・役割・数字・結果の事実確認 |
| 初稿で不足する要素を質問にする | 何を一番伝えるか決める |
| 同じ意味の重複候補を示す | 応募企業の事実を公式情報で確認する |
| 指定字数へ削る候補を出す | 本人が話せる言葉へ直す |
| 面接で聞かれそうな深掘りを挙げる | 企業ルールを守り、最終提出を判断する |
AIを使わない選択も問題ありません。目的はAIを使うことではなく、設問に答え、本人の事実を正確に伝えることです。
最初に3つのルールを確認する
1. 応募企業・学校のルール
募集要項、提出画面、学校の案内に、生成AI利用の禁止・申告・範囲指定がないか確認します。明記がなくても、虚偽、他者文章の流用、守秘義務違反が許されるわけではありません。
2. 利用サービスのデータ取扱い
入力内容が保存・学習・人による確認へ使われるか、設定で制御できるか、プライバシーポリシーと現在の画面を確認します。サービスや契約プランで扱いが違う場合があります。
3. 入力してよい情報の範囲
個人情報保護委員会は生成AI利用について、個人情報を含む入力時に利用目的やサービス提供者による取扱い等を確認するよう注意喚起しています(2026年8月13日確認)。
| 入力前に止まる情報 | 置き換え例 |
|---|---|
| 氏名、住所、電話、メール、学生番号 | 「応募者」「大学生」などへ匿名化 |
| 企業の未公開資料・実習で知った情報 | 公開情報だけにする |
| 他者の氏名・連絡先・評価 | 役割だけにし、不要なら削る |
| 顧客情報、売上、契約など勤務先の非公開情報 | 公開可能な範囲の一般表現へする |
匿名化しても、組み合わせで個人や組織が分かる場合があります。入力が不要なら入れません。
6ステップで補助利用する
1. 設問・字数・期限を自分で写す
「学生時代にチームで取り組んだことと自分の役割を400字以内」なら、対象、チーム、自分の役割、字数を抜きます。設問自体が非公開情報と指定されていないかも確認します。
2. 自分の事実を先に整理する
| 項目 | 自分のメモ |
|---|---|
| 状況 | |
| 課題 | |
| 自分の判断 | |
| 自分の行動 | |
| 変化 | |
| 学び |
AIへ経験を作らせません。思い出せない項目は空欄にし、「思い出すための質問を5つ出して」と頼むことはできます。
3. 依頼を一つに絞る
避けたい依頼:
内定する完璧なガクチカを書いて。
限定した依頼例:
以下は匿名化した自分の事実メモです。新しい事実や数字を追加せず、「チームでの役割」と「自分の判断」が不足している箇所を質問で3つ示してください。文章はまだ作らないでください。
依頼範囲、追加禁止、出力形式を明示します。ただし指示しても誤りが出る可能性はあるため、検証は必要です。
4. 出力を事実・解釈・提案へ分ける
AIが「参加率が向上した」「リーダーシップを発揮した」と補った場合、それが自分のメモにある事実か確認します。ない数字、結果、役割、感情は削ります。
5. 自分の言葉へ戻す
「課題解決力を発揮し、チームを成功に導いた」のような一般表現を、実際の行動へ戻します。
メンバーごとに完成形の認識が違うと考え、構成を1枚にまとめて確認日を決めた。
自分が普段使わない難しい言葉は、面接で説明できる表現へ直します。
6. 書類間・面接との一貫性を確認する
履歴書、別設問、面接メモと、人数、期間、役割、志望理由が一致するか確認します。AIへ過去の全書類を入力せず、自分の比較表で照合する方法もあります。
記入済み編集例
以下は架空例です。
自分の事実メモ
5人の共同発表。準備が遅れていた。私は構成案を1枚にした。担当と確認日を決め直し、発表前に通し練習ができた。
AI出力に含まれた問題
リーダーとしてメンバーを率い、準備時間を50%短縮して高評価を獲得した。
「リーダー」「50%」「高評価」は元メモにありません。事実として使えません。
本人が直した例
ゼミの共同発表で、準備の進め方を整えました。遅れの原因は、メンバーごとに完成形の認識が違うことだと考え、構成を1枚にまとめて全員で確認しました。その後、担当と確認日を決め直し、発表前に通し練習を行えました。
AIらしさを隠すために直したのではなく、本人の事実へ戻したことが重要です。架空例を自分の体験として使わないでください。
用途別の依頼例
設問の分解
次の設問が求める要素を、対象・問い・制限に分けてください。回答例は作らないでください。
不足確認
私の事実メモだけを使い、読み手が状況を理解するために不足する質問を5つ出してください。事実を補完しないでください。
字数調整
意味を変えずに削れそうな重複を候補として示してください。削除後の全文ではなく、該当箇所と理由を表にしてください。
面接準備
この回答から深掘りされそうな質問を挙げてください。模範回答は作らないでください。
出力をそのまま提出するのではなく、本人が判断する材料として使います。
AI出力の監査シート
出力を全文で「自然か」と読むのではなく、一文ずつ分類します。
| 出力文 | 元メモにある事実 | AIの解釈・追加 | 公式確認 | 採用・修正・削除 |
|---|---|---|---|---|
| あり・なし | 必要・不要 |
記入済み例
| 出力文 | 元メモ | 問題 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 私はリーダーとして5人をまとめた | 役職の記載なし | リーダーを追加 | 削除し、実際に提案した行動へ変更 |
| 発表前に通し練習を行えた | 記載あり | なし | 採用 |
| 御社は業界トップの技術力を持つ | 根拠なし | 企業評価を追加 | 公式資料で確認できなければ削除 |
| 調整力を発揮した | 行動は記載あり | 抽象的な評価 | 行動へ言い換える |
これは架空例です。文章が流暢でも、元メモにない主張は採用しません。企業事実はAIの説明ではなく、企業公式情報のURLと確認日を残します。
AIを使った履歴を自分用に残す
企業が利用申告を求める場合や、後からどこを自分で直したか確認するため、次を記録しておく方法があります。
- 利用したサービスと日付
- 入力した情報の範囲
- 依頼した作業
- 採用した提案と削除した提案
- 最終版を本人が確認した日
履歴を企業へ一律提出するという意味ではありません。企業・学校の指示があれば従い、自分が最終文章を説明できる状態を作るための記録です。
グループ経験をAIへ渡すとき
自分以外の学生、社員、顧客の氏名や評価を入力しません。「メンバーA」などに変えても、大学名、活動名、日時、役職の組み合わせで個人が分かる可能性があります。ESに必要なのは、自分が置かれた状況と取った行動です。第三者の詳細を削っても説明できる構造にします。
共同制作物、研究、インターン、アルバイトの情報には、組織の非公開情報が含まれる場合があります。公開済みの事実と、自分が話す許可を得ている範囲へ限定してください。
よくある失敗と分岐
全文生成から始めて本人の事実が薄くなる
AI画面を閉じ、状況・判断・行動・変化の表を自分で埋めます。その後、不足質問だけを依頼します。
文章が整いすぎて話せない
各文について「面接で具体例を説明できるか」を確認します。説明できない抽象語は、自分の行動へ置き換えます。
企業情報を誤っている
AI出力を根拠にせず、企業公式サイトと募集要項を確認します。確認日とURLを自分の企業研究シートへ残します。
AI利用が見抜かれるか不安
AI検出を回避する方法を探すのではなく、企業ルールを守り、事実を自分で検証し、本人が説明できる回答にします。利用禁止なら使いません。
個人情報を入力してしまった
利用サービスの削除・履歴・プライバシー設定を確認します。学校や勤務先の情報管理ルールに関わる場合は、案内された窓口へ相談してください。
提出前チェック
- 企業・学校のAI利用ルールを確認した
- サービスのデータ取扱いと設定を確認した
- 個人情報・未公開情報を不要に入力していない
- 経験、役割、数字、結果を元記録と照合した
- AIが追加した事実・評価語を削除した
- 企業情報を公式情報で確認した
- 自分の言葉で一文ずつ説明できる
- 履歴書・他設問・面接と矛盾していない
- 指定字数・形式を提出画面で確認した
チェック後はAIなしで読み直す
最終確認ではAIの画面を閉じ、設問と自分の回答だけを並べます。冒頭で問いへ答えているか、各文の事実を説明できるか、企業名・人数・数字がほかの書類と一致するかを確認します。
声に出して読んだときに意味を説明できない言葉があれば、本人の表現へ戻します。AIへ再度「自然にして」と頼み続けるのではなく、どこが伝わりにくいかを一つずつ直します。
AIの提案を採用するか判断する記入例
| AIの提案 | 自分の事実で確認 | 採用判断 | 修正 |
|---|---|---|---|
| 売上を20%改善 | 記録なし | 不採用 | 問い合わせ分類を変更と記載 |
| リーダーとして牽引 | 役職なし | 不採用 | 進行表作成を担当と記載 |
| 調整力が強み | 経験あり | 条件付き | 誰と何を合意したか追加 |
読みやすい表現でも、元の経験にない成果・役割は削除します。企業名、未公開数値、他人の個人情報を入力せず、利用サービスのデータ利用設定と企業の応募ルールを確認します。
面接へ渡せるかで最終確認する
提出文の各文について「いつ」「誰と」「自分は何をした」「なぜ選んだ」「結果をどう確認した」へ答えられるか確認します。答えられない文章は、自分の言葉へ直すか削除します。
AIへ模範回答を作らせて暗記するのではなく、面接の想定質問を出させ、自分の事実で答える練習に使います。回答内容の正しさや選考通過をAIが保証することはできません。
AIを使わない判断
企業が生成AIの利用を禁止している、入力情報の機密性を確保できない、自分で事実確認できない場合は使いません。使える場合も、経験素材の整理、質問候補、文章の冗長箇所の指摘など範囲を決めます。
提出直前に全文を書き換えさせると、本人の表現と事実の対応を確認できなくなります。最終版は文ごとに根拠経験を示し、自分で修正履歴を確認します。
完成条件
企業ルールを確認し、機密・個人情報を入力せず、生成文の事実と引用を検証し、面接で全内容を説明できます。どれかを満たせなければ、AIの提案を削除します。
他人の文章と似た場合
生成AIが一般的な表現を返し、他の応募者と似る可能性があります。言い換えを増やすだけでなく、自分が確認した状況、判断理由、周囲との役割、失敗後の修正を入れます。固有性は珍しい単語ではなく、本人が説明できる事実から作ります。
文章の自然さより、企業ルールと事実を守ることを提出判断の最優先にします。
動画選考やAI面接の準備まで必要な場合は、AI面接対策と録画練習の進め方で、回答内容・映像・音声・接続環境を分けて確認できます。
よくある質問
AIでESを書いたら不合格になりますか?
一律には言えません。企業のルール、回答の事実性、設問への適合など複数要素があります。合否予測ではなく、ルールと提出責任を確認してください。
誤字チェックだけなら使ってよいですか?
企業ルールと入力情報の扱いを確認します。誤字候補も正しいとは限らないため、原文と比較して本人が判断します。
AIへ企業名を入力してもよいですか?
公開企業名だけでも、設問、選考状況、個人情報との組み合わせに注意が必要です。入力が必要かを考え、利用規約と企業の指示を確認します。
まとめ
ESでAIを使う場合は、本人が事実を先に整理し、限定した作業だけを頼み、出力を一文ずつ検証します。個人情報と企業ルールを確認し、自分が面接で説明できる文章へ戻してください。
使い方の偏りを整理したい場合は、AI就活使いこなし診断を利用できます。
AI利用後の文章を本人の事実として読み直すときは、ESの伝わり方診断で不足情報を確認できます。設問から自力で組み直す場合はESの書き方へ戻ってください。
