OB・OG(学校の卒業生など)訪問は、選考の正解を教えてもらう場ではなく、公開情報だけでは分からない仕事内容や意思決定の実例を、社員本人の経験範囲で聞く場です。
先に目的を一つ決め、公式情報を調べ、質問を5つ用意します。訪問後は「確認した事実」「その人の経験」「まだ分からないこと」を分けて記録すると、企業研究や志望動機へ使えます。

OB・OG訪問で分かること、分からないこと
| 分かりやすいこと | 1人の訪問だけでは決められないこと |
|---|---|
| 担当業務の具体例 | 会社全体の標準的な働き方 |
| 入社後に戸惑った点 | すべての部署の雰囲気 |
| チームでの相談・判断例 | 選考の合否基準や合格可能性 |
| 仕事を理解するために役立った経験 | 将来の配属・異動の確約 |
社員の話は貴重ですが、所属、職種、入社年、経験時期によって内容が違います。「この人がそうだったから全員同じ」と広げず、募集要項や別の社員の話と照合します。
進め方は5ステップ
1. 訪問の目的を一つ決める
目的を「企業について知る」だけにすると質問が広がります。次のように、回答を得た後の判断まで決めます。
- 新卒1年目の担当範囲を知り、自分が希望する仕事とのずれを確認する
- 顧客との関わり方を知り、志望動機の企業事実を確かめる
- チームの相談方法を知り、自分の就活の軸と照合する
選考対策、仕事内容、企業比較のどれを優先するか決め、30〜45分で聞ける範囲に絞ります。
2. 大学・企業など案内された経路で探す
大学のキャリアセンター、企業の社員訪問制度、説明会後の案内、正式な訪問サービスなどを確認します。利用規約や大学・企業のルールに従ってください。
公開されていない個人連絡先を探したり、相手の了承なく別の用途へ使ったりしません。オンライン・対面とも、日時、方法、所要時間、連絡先を事前に確認します。
3. 目的と候補日時を添えて依頼する
依頼文には、所属・氏名、連絡した理由、伺いたい内容、候補日時、所要時間、返信方法を入れます。
件名:OB訪問のお願い(〇〇大学・氏名) 〇〇様 突然のご連絡失礼いたします。〇〇大学〇〇学部の〇〇と申します。大学のキャリアセンターの案内を通じてご連絡しました。 現在、〇〇業界を研究しており、特に営業職が提案後の支援へどのように関わるかを調べています。〇〇様のご経験について、差し支えない範囲でお話を伺えないでしょうか。 候補:〇月〇日〇時〜/〇月〇日〇時〜、30分程度、オンラインを希望します。ご都合のよい方法・日時がございましたら合わせます。 お忙しいところ恐れ入りますが、ご検討いただけますと幸いです。
これは形式を示す架空例です。連絡経路、目的、日時を自分の状況へ置き換えます。返信を急かさず、断られた場合や返信がない場合も相手の事情を尊重します。
4. 公式情報を読んでから質問を作る
質問は「調べた事実」「自分の関心」「分からない点」の3つで作ります。
| 調べた事実 | 関心 | 質問 |
|---|---|---|
| 採用サイトに新入社員も提案準備へ参加とある | 入社直後の役割 | 入社半年までに担当した業務の例を教えてください |
| 社員記事に週次会議の記載がある | 相談方法 | 会議ではどのような課題を共有し、誰が次の行動を決めますか |
| 募集要項に複数配属候補がある | 配属の考え方 | ご自身の配属時は、希望を伝える機会がどの段階にありましたか |
企業サイトで分かる数字をそのまま聞くより、現場での運用や具体例を尋ねます。相手の担当外なら「分かる範囲で」と添えてください。
5. 訪問後に回答の範囲を記録する
| 質問 | 回答の要点 | 誰の・いつの経験か | 公式情報と一致 | まだ不明 |
|---|---|---|---|---|
| はい・一部・未確認 |
回答を志望動機へすぐ貼り付けず、どこまで一般化できるかを確認します。機密や個人情報に当たる内容は記録・共有しません。引用や録音をしたい場合は、事前に目的と利用範囲を伝え、明確な許可を得ます。
目的別の質問例
仕事内容を知る
- 入社半年までに担当した仕事の例を教えてください
- 一人で判断する範囲と、先輩へ相談する範囲はどう分かれていますか
- お客さまとのやり取りで難しかった場面と、対応した方法を教えてください
- 繁忙期には、通常期と仕事の進め方がどう変わりますか
成長・評価を知る
- 配属後、仕事へのフィードバックを受ける機会はどのようにありましたか
- 入社前に想像していた成長機会と、実際に違った点はありますか
- 次の役割を任されるとき、どのような行動や成果が見られましたか
人・文化を知る
- チームで意見が分かれたとき、どのように決めた例がありますか
- 困ったときに相談する相手や場は、どのように決まっていますか
- 部署を越えて連携した最近の仕事例を、話せる範囲で教えてください
就活・入社判断を振り返ってもらう
- 入社前に確認しておけばよかったことはありますか
- 就活時に重視した条件と、入社後に重要だと気づいた条件は何ですか
- 同じ業界の企業を比べるとき、仕事内容のどこを見ましたか
「御社の悪いところは」「受かる答えは」のように評価や選考の秘密を求める質問は避けます。退職理由、給与明細、個人の健康・家庭など、相手が話す必要のない情報へ踏み込みません。
当日の進め方
- 開始時にお礼と予定時間を確認する
- 自己紹介と訪問目的を1分以内で伝える
- 優先質問から聞き、回答を遮らず要点をメモする
- 分からない言葉は確認し、担当外の質問は無理に求めない
- 終了5分前に残り時間を確認し、最後の質問を選ぶ
- 今後の連絡や情報の扱いを確認して終える
対面では企業や大学が案内する場所を優先します。不自然な時間・場所への変更、飲酒を伴う場、個室などに不安があれば断り、大学やサービス運営へ相談してください。オンラインでは表示名、背景、通信、URLを事前に確認します。
30分の質問順を決める
すべての質問を同じ重要度にすると、最も聞きたいことを残したまま時間が終わります。次のように「必ず聞く3問」「回答に応じて聞く2問」「時間があれば聞く2問」に分けます。
| 優先 | 質問 | この回答で判断すること |
|---|---|---|
| 必須1 | 入社半年までに担当した業務の例 | 希望する仕事とのずれ |
| 必須2 | 困ったときの相談相手と確認の流れ | 支援の実際 |
| 必須3 | 顧客の反応を改善へ戻した最近の例 | 自分の就活軸との接点 |
| 深掘り | 最初はどの部分から任されましたか | 担当範囲の変化 |
| 予備 | 入社前に確認しておけばよかった点 | 次の企業研究項目 |
これは架空の質問順です。訪問目的へ置き換えてください。訪問冒頭で相手の現在の担当を聞き、担当外の質問は無理に続けません。
回答が抽象的だったときの深掘り
「若手にも裁量があります」と回答されたら、「〇〇様が1年目に自分で判断した仕事の例を、話せる範囲で教えてください」と具体例を求めます。「チームワークがよい」なら、「意見が分かれた最近の場面では、どのように決めましたか」と行動を聞きます。
同じ質問を繰り返して答えを迫るのではなく、相手が話せない内容なら次へ進みます。「回答できない」「部署による」という返答も、適用範囲を知る情報です。
訪問後に志望動機へ使う前の確認
社員の言葉をそのまま「企業の公式見解」として引用しません。志望動機へ使う場合は、公開情報で裏付けられる事実と、自分が訪問で理解した具体例を分けます。
公式の職種紹介で導入支援まで担当すると確認し、社員訪問では1年目が先輩と利用状況を整理した例を伺った。
このように出所を分けると、1人の経験を全社へ広げにくくなります。訪問内容の公開・引用は、相手と企業・サービスのルールを確認してください。
お礼メールのテンプレート
件名:本日のOB訪問のお礼(〇〇大学・氏名) 〇〇様 本日はお時間をいただき、ありがとうございました。特に、入社直後は提案資料の一部から担当し、週次の振り返りで改善するというお話から、仕事の進め方を具体的に理解できました。伺った内容を基に、仕事内容と自分の経験との接点をさらに整理します。 貴重なお話をありがとうございました。
お礼は長い感想文にせず、理解が深まった具体的な点を一つ書きます。選考上の配慮や追加の紹介を求める文面にはしません。
訪問できない場合の代替策
- 採用サイトの異なる職種・入社年の社員記事を比較する
- 説明会で同じ質問をし、回答者の担当を記録する
- 大学のキャリアセンターへ業界・企業資料を確認する
- 面接の逆質問として、公開情報から分からない運用を聞く
OB・OG訪問は必須ではありません。訪問できないことを不利と決めつけず、複数の公式情報と質問機会を組み合わせます。
最終チェック
- 訪問目的を一つに絞った
- 案内された安全な経路で連絡した
- 公式情報を読み、質問5つを用意した
- 相手の担当・経験年・話せる範囲を意識した
- 機密・個人情報・合否の秘密を求めていない
- 当日の場所・方法・所要時間を確認した
- 回答を事実・個人経験・未確認に分けて記録した
- お礼で具体的に理解した点を一つ伝えた
チェック後は、訪問で分かったことを企業研究シートの「確認した事実」「個人の経験例」「未確認」へ転記します。質問へ答えてもらったことだけで志望度を上げ下げせず、自分の就活の軸に関係する情報かを確認してください。次の社員へ同じ質問をする場合も、最初の回答を正解として誘導せず、それぞれの部署・時期の違いが分かる形で聞きます。
質問を公開情報から作る記入例
| 公開情報 | 分からないこと | 訪問で聞く質問 |
|---|---|---|
| 求人に顧客支援と記載 | 一日の比重 | 導入前後で担当時間はどう変わりますか |
| チーム制と記載 | 個人の判断範囲 | 新人が自分で判断する範囲はどこですか |
| 研修制度あり | 配属後の支援 | 配属後に相談する相手と頻度を教えてください |
公式サイトに書かれた内容をそのまま尋ねず、働く場面でどう運用されるかへ変えます。一人の回答を会社全体の事実にせず、回答者の部署・時期・経験として記録します。
答えにくい質問の直し方
「残業は多いですか」は評価基準が人によって違います。「繁忙期はいつか」「通常期と繁忙期で退勤時刻はどう変わるか」「業務量を調整する方法はあるか」に分けます。「社風はよいですか」は「意見が異なるとき誰がどう決めるか」へ直します。
給与、休暇、異動など重要条件を聞いてはいけないわけではありません。個人の給与額ではなく、採用窓口で確認すべき制度と、社員訪問で分かる運用を分けます。
訪問後の事実メモ例
回答者は営業部に三年在籍。新人の担当範囲について、最初の三か月は先輩同席、その後は案件ごとに上司確認と説明された。全社共通かは未確認。採用窓口へ研修制度を確認する。
「社風がよい」と要約せず、誰のどの時点の経験か、確認できた行動、全社制度と分けて残します。志望動機に使う場合も、一人の発言を企業方針として断定しません。
訪問を断られた場合
返信がない、都合が合わない場合に繰り返し連絡せず、大学窓口、説明会、採用担当など別の確認手段へ切り替えます。断られた理由を推測して相手や企業を評価しません。訪問できなくても、募集要項から未確認事項を作り、企業研究を進められます。
よくある質問
何人に訪問すればよいですか?
人数に正解はありません。1人の経験だけで会社全体を断定せず、必要に応じて職種や入社年が異なる人、公式情報と照合します。
選考前に訪問できなくても問題ですか?
訪問は必須ではありません。説明会、採用サイト、面接での質問など、利用できる方法で不明点を確認します。
質問は何個用意しますか?
優先5問と予備2〜3問が目安です。当日は時間と会話に合わせ、すでに答えが出た質問は飛ばします。
まとめ
OB・OG訪問は、調べた事実を具体的な仕事の質問へ変え、社員の経験範囲で確かめる機会です。目的を一つ決め、質問5つと記録表を用意してください。
質問の方向が決まらない場合は、企業研究力診断で情報不足の領域を整理できます。
訪問前の業界全体の仮説は業界研究のやり方、選考面接で使う質問への編集は逆質問の例と選び方で確認できます。質問領域を絞る場合は、逆質問の準備タイプ診断も利用できます。
